海洋散骨は、遺骨を海に撒くことで故人を供養する方法です。実は、一部では環境汚染の懸念も指摘されています。ここでは、海洋散骨が環境に与える影響や、適切に行うためのルール・対策について詳しく解説します。
海洋散骨が環境に与える影響

遺骨自体の環境負荷
人体の遺骨は主にリン酸カルシウム(骨の主成分)でできており、自然分解されるため、基本的には海を汚染することはありません。
ただし、骨壷のままや、未粉砕の大きな遺骨を海に投げ込むと、分解されるのに時間がかかり、適切な散骨とは言えません。
副葬品・装飾品の問題
遺骨と一緒に流す花や副葬品の中には、**生分解されない素材(プラスチック・金属・合成繊維)**が含まれることがあり、これが海洋ゴミとなる可能性があります。
過去には「遺品や手紙などを一緒に撒いたことで環境汚染になった」との事例もあり、現在では自然に還るもの以外は禁止されています。
洗骨時の化学物質
遺骨を散骨する前に「洗骨(せんこつ)」という工程を行うことがあります。この際、化学薬品が使用されることがあり、それが適切に処理されないと環境負荷が懸念されます。
適切な海洋散骨のルールと対策
海洋散骨が環境に与える影響を最小限にするため、日本では以下のルールが推奨されています。
散骨する場所
環境省のガイドラインでは、漁業区域や海水浴場、港の近くを避け、沖合で行うことが求められています。
一般的に海岸から3km以上沖で散骨するのがルールです。
遺骨の処理
2mm以下のパウダー状に粉骨することが推奨されており、大きな骨片を残さないようにします。
骨壷ごと投げ捨てるのは厳禁であり、粉骨した遺骨を海に撒く方法が基本です。
副葬品・供物のルール
自然分解される花(生花)以外はNG。ラッピングや造花、ビニール類は禁止されています。
遺品や手紙を一緒に流す行為も、環境への影響を考慮し、避けるべきとされています。
法律上の扱い
日本では、海洋散骨は法律上の「墓地埋葬法」には直接適用されませんが、節度を持って行うことが求められています。
適切な方法で散骨を行えば違法ではありませんが、環境への配慮が不十分だと問題視されることがあります。
海外での環境規制
海外では、海洋散骨の規制が厳しい国もあります。
アメリカ(EPA規制)
- 海洋散骨は海岸から3海里(約5.6km)以上沖合で行うことが義務付けられています。
- 遺骨の粉砕処理が必須であり、違反すると罰則が科せられる場合があります。
イギリス
- 海洋散骨には政府の許可が必要な場合があり、適切な環境対策が求められています。
オーストラリア
- 散骨の際に使用する花びらや副葬品に対する厳格な規制があり、分解されないものは禁止されています。
まとめ
- 遺骨そのものは海を汚染しないが、未粉砕の遺骨や骨壷、副葬品が原因で環境問題になる可能性がある。
- 適切なルール(沖合での散骨・粉骨の徹底・副葬品の制限)を守れば、環境負荷は少ない。
- 日本や海外では、海洋散骨に関する規制が徐々に厳しくなっているため、環境に配慮した業者を選ぶことが大切。
海洋散骨を検討する際は、環境保護の観点も考慮しながら、適切な方法で行うことが重要です。