近年、自然葬の一形態として注目を集める「海洋散骨」。故人の遺骨を海に撒くことで自然に還すこの方法は、環境への配慮や後継者問題の解消など、さまざまな理由から選ばれています。
しかし、実際に海洋散骨を行う際には、法的な手続きや必要書類、注意点など、事前に確認すべき事項が多く存在します。
この記事では、海洋散骨を検討している方々に向けて、手続きの流れや必要な書類、注意すべきポイントについて詳しく解説します。
◎この記事でわかること◎
- 海洋散骨の基本的な流れ
- 海洋散骨に必要な書類
- 法的な注意点とルール
- よくある質問
海洋散骨の基本的な流れ

海洋散骨を行う際の一般的な手続きの流れは、以下の5つのステップに分けられます。
ステップ1:散骨業者の選定
まずは、信頼できる散骨業者を選定します。業者を選ぶ際には、以下の点を確認しましょう。
散骨可能なエリアや海域
提供されるプランの種類(貸切散骨、合同散骨、代行散骨など)
費用やサービス内容
過去の実績や口コミ
散骨証明書や記録の提供の有無
ステップ2:プラン内容の確認と契約手続き
業者が決まったら、希望する散骨プランの詳細を確認し、正式な契約を結びます。契約書には、以下の内容が含まれることが一般的です。
散骨日時や場所
費用の総額と内訳
支払い方法やキャンセルポリシー
提供されるサービスの詳細
ステップ3:粉骨処理の実施
海洋散骨を行う前には、遺骨を粉末状にする「粉骨処理」が必要です。多くの散骨業者では、このサービスを提供しています。粉骨処理を行うことで、遺骨が海に自然に還りやすくなります。
ステップ4:散骨の実施
指定された日時に、業者の手配で海洋散骨が行われます。散骨の際には、献花や黙とうなどのセレモニーが行われることが一般的です。海域や天候などの条件によっては、日程の変更や延期が生じる場合があります。
ステップ5:散骨証明書や記録の受け取り
散骨が完了すると、散骨日時や場所などが記載された「散骨証明書」が発行されます。また、写真や動画での記録を希望する場合は、オプションで対応している業者もあります。これらの証明書や記録は、後日家族や関係者への報告や記録として活用できます。
海洋散骨に必要な書類
海洋散骨を行う際に必要となる主な書類は以下の通りです。
申込書
業者が指定する申込書には、故人の情報や申込者の連絡先、希望する散骨プランなどを記入します。正確な情報の記入と押印が求められます。
火葬許可証または埋葬許可証
海洋散骨を申し込む際には、火葬を終えたことを証明する「火葬許可証」または「埋葬許可証」の提出が必要です。これらの許可証は、市町村役場で「死亡届」を提出する際に交付されます。
改葬許可証(墓じまいの場合)
既にお墓に埋葬されている遺骨を取り出して海洋散骨を行う場合、「墓地、埋葬等に関する法律」に基づき、市町村長の許可を得て改葬する必要があります。改葬許可証は、墓地管理者(住職など)からの同意を得た上で申請します。
法的な注意点とルール
海洋散骨には、法的な規制やルールが存在します。以下の点に注意しましょう。
3.1 遺骨の取り扱い
遺骨は必ず粉末状に処理し、視認できないようにすることが求められています。これは、法務省の見解や厚生労働省のガイドラインに基づくものです。
3.2 散骨場所の選定
散骨場所は、漁場や養殖場、観光地などの人々の生活や活動に影響を与える可能性のある場所を避ける必要があります。また、静岡県熱海市や伊東市など、一部の自治体では散骨に関する条例が定められており、特定の距離以上離れた海域での散骨が求められる場合があります。
3.3 副葬品の取り扱い
副葬品として撒くものは、海に還る素材であることが望ましいです。花びらやお酒など、自然に分解されるものを選びましょう。
よくある質問
海洋散骨は誰でも行えるのですか?
はい、基本的には誰でも行うことができます。ただし、遺族間での合意や必要書類の準備が必要です。
散骨証明書は法的に必要ですか?
散骨証明書は法的な義務ではありませんが、後日家族や関係者への報告や記録として役立ちます。
自分で散骨を行うことは可能ですか?
自分で散骨を行うことも可能ですが、法的な規制やルールを遵守する必要があります。専門業者に依頼することで、手続きや法的な問題をクリアにすることができます。
費用の目安
個別散骨:15万円~50万円
合同散骨:5万円~20万円
委託散骨:3万円~10万円
粉骨費用:1万円~3万円
まとめ
海洋散骨は、故人の意思を尊重し、自然に還す供養方法として注目されています。
しかし、実施に際しては法的な手続きや必要書類、ルールなど、事前に確認すべき事項が多く存在します。専門業者と連携し、適切な手続きを踏むことで、安心して海洋散骨を行うことができます。海洋散骨を検討している方は、信頼できる業者と相談し、納得のいく供養方法を選択しましょう。