海洋散骨は、故人の遺骨を海に還す新しい葬送の形として注目されています。
日本では法的に明確な規制はありませんが、関係省庁や業界団体がガイドラインを策定し、適切な実施を促しています。
今回は「海洋散骨の主なガイドラインの概要」について、初心者向けにわかりやすく詳しく解説します。
◎この記事でわかること◎
- 国土交通省の海上散骨に関するガイドライン
- 日本海洋散骨協会の自主ガイドライン
- 地方自治体の独自ガイドライン
- 散骨を検討する際のポイント
国土交通省の海上散骨に関するガイドライン

国土交通省は、海上での散骨に際して遵守すべき海事関係法令を整理し、2023年9月にガイドラインを発表しました。散骨事業者が旅客を乗船させて散骨を行う場合、以下の法令の遵守が求められます。
海上運送法:旅客定員に応じて、13名以上の船舶は許可、12名以下の船舶は登録が必要です。
船員法、船舶職員及び小型船舶操縦者法、船舶安全法:安全管理規程の設定・届出、安全統括管理者や運航管理者の選任・届出、船客損害賠償保険の締結などが求められます。国土交通省
これらの法令に関する詳細な解説は、国土交通省の公式サイトに掲載されています。
日本海洋散骨協会の自主ガイドライン
一般社団法人日本海洋散骨協会は、加盟事業者向けに自主的なガイドラインを定めています。主な内容は以下の通りです:
粉骨の義務:遺骨を1~2mm程度に粉末化し、遺骨と判別できない状態にすること。
散骨場所の選定:陸地から1海里(約1.8km)以上離れた海域で行い、漁場・養殖場・航路を避けること。
環境への配慮:金属・プラスチックなど自然に還らない物質を海に撒かないこと。
安全確保:船客賠償保険(1人あたり3,000万円以上)への加入、ライフジャケットの着用、緊急連絡体制の整備など。
散骨意思の確認:故人の生前の意思や、葬儀主催者の申込みに基づいて実施すること。
散骨証明書の交付:遺族の希望があれば、散骨場所の緯度・経度を記載した証明書を交付し、情報を10年間保管すること。
これらのガイドラインは、遺族の安心と周囲の理解を得るために策定されています。
地方自治体の独自ガイドライン

一部の自治体では、独自のガイドラインを設けています。例えば、静岡県熱海市では、海洋散骨を行う事業者に対して以下のような責務を定めています:
熱海市内の土地(初島を含む)から10km以上離れた海域で行うこと。
海水浴やマリンレジャーの利用者が多い夏期には散骨を控えること。
事業の宣伝・広報に際して、地域住民や観光客への配慮を行うこと。
これらのガイドラインは、地域の風評被害やトラブルを防ぐために設けられています。
散骨を検討する際のポイント
海洋散骨を検討する際は、以下の点に留意してください:
法令遵守:国の法令や自治体の条例を確認し、適切な手続きを行うこと。
信頼できる事業者の選定:日本海洋散骨協会の加盟事業者など、ガイドラインを遵守する事業者を選ぶこと。
環境と周囲への配慮:自然環境や周囲の人々の感情に配慮し、節度ある方法で行うこと。kaiyousou.or.jp
詳細な情報や事業者の一覧は、日本海洋散骨協会の公式サイトで確認できます。
まとめ
海洋散骨は、自然に還るという理念のもと、故人を偲ぶ新しい形の葬送方法です。法令やガイドラインを遵守し、環境や周囲への配慮を忘れずに行うことが大切です。