近年、「お墓を持たない供養方法」として注目されている海洋散骨。遺骨を自然に還すというこのスタイルは、自然志向や後継者不在の時代背景を受け、急速に普及しつつあります。
しかし、まだまだ法的な整備や社会的な理解が十分とは言えない中で、「海洋散骨は本当に合法なのか?」「厚生労働省はどう考えているのか?」という疑問を持つ方が多く、「海洋散骨 厚生労働省」というキーワードで検索される理由にもなっています。
このページでは、厚生労働省の見解、法律的な扱い、安心して実施するためのポイントなどを詳しく解説します。
◎この記事でわかること◎
- 海洋散骨とは
- 厚生労働省の海洋散骨に対する見解とは
- 節度ある散骨とは
- 厚生労働省が関与していないことによるリスクとは
- 安心・合法に海洋散骨を行うためのチェックリスト
- よくある質問
海洋散骨とは

海洋散骨とは、火葬されたご遺骨をパウダー状に粉骨し、船で沖合まで出て海に撒くという自然葬の一種です。
お墓に納骨せず「自然に還る」ことを目的とする方に選ばれています。
厚生労働省の海洋散骨に対する見解とは
厚生労働省は、海洋散骨について明確な法規制を設けていません。しかし、一定のガイドラインを示しており、「社会的に節度ある方法で行う限り、違法とは言えない」という立場を取っています。
具体的な見解(1991年の厚労省通知)
「遺骨の処理の方法として、葬送の一つの形としての散骨は、節度をもって行われる限り、刑法190条(死体遺棄罪)には該当しないと解される」
(厚生省生活衛生局「葬送に関する質問主意書に対する答弁書」より)
この通知以降、海洋散骨は違法ではないが、節度ある形での実施が求められるという認識が一般的となっています。
海洋散骨は法律上どのように扱われているのか?
海洋散骨は、以下のように法律と照らし合わせて考えられます。
刑法190条「死体遺棄罪」には該当しない
→ 遺骨(焼骨)を遺棄(放置)する意図ではなく、葬送目的で散骨するので違法ではない。
墓地・埋葬法の適用外
→ 墓地・埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)は、墓地への埋葬や改葬などを規定するもので、散骨についての直接的な規定は存在しません。
「節度ある散骨」とは
厚生労働省や業界団体の基準
厚生労働省は明確なルールを設けていませんが、民間団体や自治体が自主的に基準を定めています。
一般的に「節度ある」とされる条件
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人が海水浴や釣りをする場所・港湾・漁場などを避けて行う
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粉骨処理(2mm以下の粒子)を必ず行う
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関係者(家族・親族)の合意を得て行う
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船で沖合(目安として5km以上)に出て実施
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散骨ポイントのGPS記録・証明書の発行など、記録が残る方法で行う
このような節度を守った散骨であれば、法的な問題が生じる可能性は極めて低くなります。
厚生労働省が関与していないことによるリスクとは?

厚生労働省が直接的な規制を行っていないことは、自由度がある一方で、以下のようなリスクも存在します。
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自治体によって見解や対応が異なる(条例で禁止しているケースも)
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無許可・悪質な業者によるトラブル(遺骨の遺棄に近い行為など)
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海域の使用に関するトラブル(海上保安庁との連携不足)
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散骨後に「どこに祈ればいいか分からない」などの心理的問題
そのため、厚労省の基準が緩やかであるからこそ、信頼できる専門業者の選定や家族との合意形成が非常に重要です。
安心・合法に海洋散骨を行うためのチェックリスト
海洋散骨を厚労省の見解を踏まえて適切に行うには、以下をチェックしましょう。
- 散骨業者が粉骨処理をしてくれるか
- 沖合の安全なエリアで実施しているか(漁場・港を避けている)
- 散骨証明書を発行してくれるか
- 近隣住民や関係者への配慮があるか
- 家族や親族の合意を得ているか
よくある質問
海に散骨して本当に問題ないのですか?
はい。厚労省の見解では、節度ある方法であれば違法ではないとされています。ただし、マナーや環境への配慮は必須です。
地域によって禁止されていることはありますか?
一部自治体では条例で散骨を制限しているケースもあります。海洋散骨を行う際には、事前に業者や自治体に確認しましょう。
厚生労働省の許可は必要ですか?
いいえ、厚生労働省の許可は不要です。個人でも業者でも、節度を守っていれば法的な手続きはありません。
厚労省のガイドラインはあるのですか?
法的なガイドラインではなく、「1991年の通知」が事実上の指針とされています。詳細は厚生労働省のサイトでは公開されていないため、業界団体のルールや専門業者の説明を参考にしましょう。
まとめ
「厚生労働省の見解=安心」ではない。信頼できる業者選びが最重要
海洋散骨は、厚生労働省が明確に認めている供養方法ではありませんが、「違法ではない」とされるグレーゾーンにあります。
だからこそ、信頼できる業者を選び、関係者としっかり話し合い、節度ある方法で実施することが不可欠です。
供養の自由が認められる時代だからこそ、心を込めた選択をするために、厚労省の見解を正しく理解し、後悔のない決断をしましょう。