近年、自然志向やお墓を持たない選択が広がるなかで、海洋葬(海洋散骨)は注目を集めています。
しかし、「お墓がいらない」「費用が抑えられる」といったメリットばかりが語られがちで、実際に検討する際に重要となるデメリットや注意点を知らないまま決めてしまうと、後々トラブルや後悔につながるケースもあります。
一方で、デメリットを上回るほどのメリットがあるのも海洋葬の魅力でもあります。
この記事では、海洋葬を検討している方が事前に把握すべきデメリットや注意点、メリットを詳しく解説します。
◎この記事でわかること◎
- 海洋葬とは
- 海洋葬のデメリット
- デメリットをカバーするための対策
- 海洋葬のメリット
- メリットを活かすためのポイント
海洋葬とは
海洋葬とは、火葬後のご遺骨を粉末化し、海に散布して自然へ還す供養方法です。
「散骨」の一種であり、特に海に行う場合を「海洋散骨」「海洋葬」と呼びます。
法律上は「墓地埋葬法」に直接の規定はありませんが、厚生労働省は「葬送のための祭祀であると認められる限り、節度をもって行う散骨は問題ない」としています。したがって、正しい方法で行えば違法ではありません。
海洋葬のデメリット
供養の場がなくなることへの心理的負担
お墓や納骨堂は、家族が集まり、故人を偲ぶ「拠り所」としての役割を果たします。
海洋葬では具体的な供養の場がなくなるため、
お盆や命日にお参りする場所がない
「故人がどこにいるのかわからない」という喪失感
といった精神的な寂しさを感じる遺族も少なくありません。
実施にあたって法的な配慮が必要
海洋葬自体は法律で禁止されていませんが、廃棄物処理法や刑法の不法投棄に触れない形で行う必要があります。
粉骨(2mm以下のパウダー状)が義務
海岸から一定距離を保つ
漁業権や環境保護区域の確認
専門業者を通さず個人で実施すると、違法となるリスクがあります。
天候・海況に左右される
海洋葬は天候に大きく左右されます。
台風や強風で出航が中止・延期になる
冬場は波が高く、予定が立てにくい
高齢の参列者が船酔いする可能性
日程変更が多くなると、参列者の予定調整が難しくなる点もデメリットです。
親族間で話し合いが必要
故人が「海洋葬を望む」と言っていても、
「お墓参りができないのは困る」
「伝統や宗教観に合わない」
などの理由で、親族が納得できないケースがあります。
遺言やエンディングノートで本人の意思を明確に残すこと、事前の話し合いがとても重要です。
費用が想定より高くなるケースも
「お墓を建てるより安い」と言われますが、
船のチャーター費用
参列者の交通費
粉骨や法要オプション
を追加すると数十万円かかる場合があります。
費用の内訳や追加料金を事前に確認しておくことが大切です。
デメリットをカバーするための対策
手元供養を併用
遺骨の一部を手元に残す「分骨」や、遺骨を加工したメモリアルペンダントを検討する。信頼できる業者を選ぶ
行政の認可や海上保安庁への届出など、法令遵守を徹底している業者を選定。エンディングノートや公正証書遺言を活用
本人の希望を明確に記録し、家族間の誤解やトラブルを防ぐ。事前相談・事前見積もりを必ず
粉骨・出航・献花・写真撮影など、費用項目を細かく確認してから契約する。
海洋葬のメリット
経済的負担が大幅に軽減できる
海洋葬はお墓を建てない供養方法のため、従来の墓地・霊園よりも費用を抑えられます。
一般的な墓地購入:数百万円〜
海洋葬:5万円〜30万円程度
管理費や年間維持費も不要なので、長期的に見ても経済的負担が少ない点は大きな魅力です。
生前から費用を把握でき、計画的な終活がしやすくなります。
自然に還るという精神的満足
海洋葬は「海に還る」という自然回帰の考え方に基づいています。
故人が生前「自然に戻りたい」と願っていた
海が好き、海に縁がある
といったケースでは、故人の想いを形にできる供養方法です。
海という広大な自然に抱かれることで、残された家族も「また海で会える」という安心感を得られる人が多いと言われます。
お墓の管理が不要
お墓を持たないため、
墓掃除や草取りの手間
管理費の支払い
遠方へのお参り
といった負担から解放されます。
後継ぎがいない家庭や、子どもにお墓の管理を任せたくない方にとっては大きなメリットです。
宗教や宗派に縛られない
海洋葬は、特定の宗派や寺院の慣習にとらわれません。
無宗教でも実施可能
キリスト教や仏教など宗派混在の家族でも対応可能
現代の多様なライフスタイルに合った、自由度の高い供養方法といえます。
さまざまなプランで柔軟に対応できる
海洋葬には複数のスタイルがあり、希望に応じて選べます。
家族だけで行う「個別散骨」
業者に委託する「代理散骨」
多くの遺族が参加する「合同散骨」
人数や予算、日程に合わせてカスタマイズできるのも魅力です。
近年は、遺骨の一部を残す「手元供養」との併用プランも増えています。
海という大きな「お墓」がある安心感
海洋葬では具体的なお墓は持ちませんが、
毎年の命日に海を訪れる
思い出の海岸や展望台で故人を偲ぶ
といった形で、海そのものが供養の場となります。
家族が自由なタイミングで供養できるのは、現代のライフスタイルに合っています。
環境への配慮
お墓を作らないことで土地資源を消費せず、環境への負荷も軽減。
遺骨は細かく粉骨し、海洋環境に配慮して撒かれるため、エコロジーな供養として注目されています。
近年では海洋保全活動と連携する業者もあり、社会貢献につながるケースもあります。
未来の家族に負担を残さない
後継ぎがいない、子どもに管理を任せたくない場合、
維持費ゼロ
お墓の撤去問題がない
ため、将来世代への負担を残さない終活として最適です。
高齢化社会で「子どもに迷惑をかけたくない」と考える人に支持されています。
メリットを活かすためのポイント
事前相談と見積もりをしっかり
粉骨費用や船のチャーター料金など、追加費用の有無を確認。手元供養との併用
遺骨の一部をペンダントやミニ骨壷に残すことで、心理的な安心感を得られます。家族全員の合意形成
メリットが多くても、親族が納得していなければトラブルのもとに。
まとめ
海洋葬は、費用の安さ・自然に還る満足感・管理不要など、現代のライフスタイルに合った多くのメリットを持つ供養方法です。
特に、後継ぎがいない家庭や、環境に配慮した終活を希望する方にとっては理想的な選択肢といえるでしょう。
ただし、遺骨を取り戻せないなどのデメリットもあるため、家族との話し合いや手元供養の併用など、事前の準備と理解が大切です。
海に抱かれて眠るという新しい供養のかたちは、これからますます注目を集めていくでしょう。

